2009年7月26日日曜日

天地人 ~女たちの上洛~

第30回「女たちの上洛」

上杉軍は越後に凱旋する。久方ぶりの故郷では娘がすくすくと育っていた。誰もが戦のない世の到来を喜んだ。

秀吉は諸大名に正夫人を上洛させるよう命ずる。体のいい人質であることは誰の目にも明らかだった。景勝は私情を抑え、上洛を求めるが菊姫は拒む。再度の上洛の折りに伴うことは叶わない。秀吉は「この儀ばかりは目こぼしならぬ」と譲らない。

お船は説得の為、日参するが菊姫の心は頑なだった。お船は俄かに産気づき、そのまま出産する。菊姫はお船が気がつくまで、赤子を抱いていた。この時代に生きる女同士、菊姫は心の内を少しづつ話し始めるのだか…

その頃、京では利休が蟄居を命ぜられていた…
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今回はこれまであまり出番のなかった菊姫を知ることができました。何故、上洛を拒むのか。この時代に国主の妻となった女性は役割と気持ちの狭間で悩み抜いたことと思います。自分の気持ちを素直に口にできないことを責めることはできないでしょう。お船の産んだ赤子をあやす菊姫の笑顔を見て、ほっとしました。

利休の切腹には秀吉の破滅の兆しを見る思いでした。理と情。その片側を欠く豊臣の世の危うさを感じます。

「この世は人で出来ておるのだ。人には情がある。情を忘れれば人はついて来ぬ」

この回の隠れたテーマは「情」ではないでしょうか。

2009年7月22日水曜日

ガンダム万歳!!

アニメも大好きで数多く見ましたが、銀河英雄伝説の次くらいに好きなガンダムは30周年で大変な盛り上がりですね。実物大ガンダムの肩に乗る権利が260万で落札とか… "遥かな高みから…"とか佐為の言葉が浮かびます(笑) これを機に原点に戻ってみようかなぁ… 先週本屋で、ヒカルの碁KAIOvsHAZEを立ち読みして、一気に"北斗杯への道"まで見続けた自分にはかなり危険かもしれません(^^ゞ

BANDAICHANNEL - バンダイチャンネル

2009年7月20日月曜日

カルパチア綺想曲

午前3時。玄関ホールからノッカーの重く硬い響きが伝わってきた。
その夜、ジョーは同僚のアランとのハンマー大王の取材を終え、深夜帰宅したところだった。6年ぶりに帰国した父ジェラード・アッテンボローと中国人女性ランファも一緒である。
青年貴族はヴルム伯の息子でイオンと名乗った。
ハンガリー独立運動の巨頭であるヴルム伯は捕えられ、カルパチア山中の城塞に幽閉されているという。ヴルム伯と旧知のアッテンボローに助けを求めたのだ。ジョーはある予感を感じていた。何かが起こる。確信めいた期待をこめて、彼らの話に聞き入った…
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物語の舞台はオーストリア・ハンガリー二重帝国(アウスグライヒ)。19世紀末は民族独立運動がヨーロッパを席巻していた。1867年に成立した二重帝国ではオーストリア皇帝がハンガリー国王を兼ねる。このような例は他にもあり、ロシア皇帝はフィンランド大公を兼ねていた。抑圧しようにも困難な民族独立運動をこのような形で取り繕っていた。二重帝国の解体は第一次世界大戦後である。

この小説の主人公は英国人である。1815年のナポレオンのセント・ヘレナ島流刑から1914年の第一次世界大戦まで約100年。英国本土は平和を満喫し、繁栄の世紀を迎えた。侵略はしたが侵略はされず、地球上の陸地の4分の1と海洋の大部分を支配した。太陽の没せざる大英帝国、ビクトリア女王の治世である。

1888年 切り裂きジャックの連続殺人
1889年 パリ国際万博
1890年 ロンドンに地下鉄開通
1891年 教育法成立。公立学校は無料になる。
1893年 トーマス・エジソン(アメリカ)が活動写真を発明
      ドイツでディーゼルが新型エンジンを発明
1894年 八時間労働法
1895年 H・G・ウェルズが「タイム・マシン」を発表
1896年 アテネで第1回オリンピック大会

議会政治の尊重と言論の自由。開明的な精神が英国を時代のリーダーにしたと言えるでしょう。事実上の世界共通語は英語。それこそ、英国にとって何物にも代えがたい大きな遺産かもしれません。

カルパチア山脈への中継点となるブダペスト(ドナウの女王)とアドリア海最北部の都市トリエステも興味深い。

大好きなこの本をご紹介したくて3回読みなおしました(本当)
是非、時代の空気を堪能して下さい☆

二重帝国 (Wikipedia)

カルパチア綺想曲(1994年)
田中芳樹

2009年7月19日日曜日

天地人 ~天下統一~

第29回「天下統一」

天正18年(1590年)秀吉は北条攻めを開始する。北国軍の上杉、前田、真田は上州・松井田城を降伏させる。敗軍の将、大道寺政繁への心配りに利家らは感服する。戦のない世を作る。義を掲げ続ける上杉の真骨頂といえる。兼続は戦場に戦友の名札を持参していた。

秀吉は未だ参陣しない正宗に苛立つ。家康に正宗を説得させる。家康からの書状には「参陣無用」と書かれていた。家康の思惑を見抜いた正宗は白装束で参陣する。秀吉は遅参を責め、会津領を没収する。

徹底抗戦を主張する北条氏政の眼前に石垣山城が出現する…
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真心をもって対しても八王子城のように総攻めしなけれならない場合もあるのですね。戦乱の世に「義」、「愛」を掲げることの難しさを感じます。家康を軍功第一として関八州に移封…。虚虚実実の駆け引きは何ともリアルですね。秀吉、家康のインサイドワークには舌を巻きます。「小田原城は小さい」の一言に茶々の才覚と時代のうねりを感じました。

2009年7月12日日曜日

天地人 ~北の独眼竜~

第28回「北の独眼竜」

惣右衛門は妻よしと出産を控えた お船を見舞う。自分の時よりも優しい夫によしは泣き出すが、"そなたより歳かさゆえ"と諭す。

秀吉からの書状は奥羽の伊達正宗に関することだった。兼続は景勝の名代として赴く。戦乱に民は疲弊している。新しい国造りに協力せよと言うが、正宗は取り合わない。
天正17年(1589年)6月。兼続は佐渡にわたり、河原田城主・本間高統を説き伏せる。「戦乱のない世で民のため、尽力してほしい」
佐渡平定の間隙を突いて、正宗は会津の芦名を滅ぼす。景勝は越後の守りを固めるのだが…
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戦乱のない世界。後世の我々はその後も日本でも世界でも戦いは無くならないことを知っています。先の見えない戦国時代に「愛」を掲げ、真っ直ぐに生きた兼続は実に鮮やかですね。北条や伊達とも連絡を持つ、家康の強かさには舌を巻きますが、後に天下人になっても上杉を潰さなかったのは、上杉を認めていたのかもしれません。

2009年7月5日日曜日

天地人 ~与六と与七~

第27回「与六と与七」

天正15年(1587年)景勝は越後を平定する。兼続は与七を清和源氏の流れをくむ名門小国家へ婿入りさせる。与七は実頼と名を改め、小国実頼となる。気位の高い小国家で、手柄のない実頼は肩身の狭い思いをする。聚楽第落成の祝いの使者として、実頼は景勝の名代として上洛する。大任を帯びた実頼を秀吉は厚遇し、官位を与える。茶々からは名を大国と改めるよう勧められる。役目を果たし、意気揚揚と帰国したのだが…

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今回もお涼は変わらぬ美しさで感服しましたw 教養と涼しげな美貌はまるで百合の花のようですね。茶々も匂い立つような華やかさで時代の空気を感じました。もちろん、我らがお船の暖かな美しさも、また良し。懐妊を告げる、はにかんだ笑顔が素敵でした。

名を改めるよう勧める話で「竜馬がゆく」を思い出しました。雇い入れた外国人船員の名が"ナイ"なので"アル"と名乗るよう勧めていました。「名は体を表す」。京に残り、精神的に独り立ちした実頼には頑張ってほしいものです。

2009年7月3日金曜日

バルト海の復讐

1226年 神聖ローマ(ドイツ)皇帝フリードリヒ2世はリューベック市に「帝国自由都市特権状」を下賜。リューベック、ヴィスマル、ロストクの三都市間同盟に北ドイツ諸都市も相次いで加盟し、巨大な自由経済圏が出現した。

1492年冬。
主人公の名はエリック。親友のブルーノ、力自慢のマグヌス、太っちょのメテラーらを伴い、一本柱帆船(コツゲ)に乗り込む。亡くなった祖父の忠勤が認められ、船長に抜擢されて初めての出帆。航海の目的はリトアニアの琥珀の買い付け。大きな仕事を任され、張り切ったのだが、エリックは冬のバルト海に投げ込まれてしまう。陸の方向も分からない夜の海… ポセイドンの生贄となるところ、辛くもブローテン断崖に辿り着き、謎の老婆に助けられるのだが…

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世界史の教科書は小説やドラマのファンにとっては楽しいものですね。それぞれの時代に出現する、偉大な才能や新しい社会の在り方にはワクワクさせられます。人の歴史はどのページも戦争で占められていて、歴史の研究はまるで"戦争の研究"のようであることは私も「同感」です。…それでも、ハンザ同盟や薔薇戦争、オーストリア・ハンガリー二重帝国(アウスグライヒ)などの魅力的な「名詞」には想像の翼が羽ばたきます。この物語は、大航海時代以前の未だ貧しいヨーロッパが舞台です。ハンザ同盟の盟主リューベック市や古都アウグスブルクは、いずれ訪ねてみたいものです(^^)v

田中芳樹氏のファンとしては、作中に登場する名詞に思わずニヤリとさせられました(笑)
・赤髭皇帝(バルバロッサ)
・リューベック
・リューネブルク
・ベルゲン
・帝国騎士(ライヒスリッター)
・聖なる避難場所(アジール)

…さて、黒猫の「白」(ヴァイス)は誰についていくのかな?
"狐のラインケ"も読んでみたいものですwww

バルト海の復讐(2001年)